王子様と堕姫様


「何をする気ですか、リナリア姫?」

握る力がますます強くなる。

「私は…ッリナリアではありませんッ…」



相手は私の話には全く耳を傾けなかった。
もちろん必死な抵抗も無駄であった。


そうかと思えば、
いきなり私を抱き締め、
『君が生きていて良かった。』
と言った。


「放してください…!!」


私の家族を殺した王子様が
何を言っているんだ。


「あの時君の姿がなかったから。」


「あの時…?」


「僕が君の家族を殺した時。」


その言葉を聞いたとき、
力が抜けるとと共に
相手の抱き締める力が強くなる。


「やはりあなたがお殺しになったのね。」



どうしたのだろう。

分かっていたことではあったが、
あっさりとこう言われると、
なんだか全てがどうでもよくなる。
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