王子様と堕姫様
もうここまで来て
隠すものは何もない。
この屋敷にいる意味もない。
「私、今日で使用人を
辞めさせていただきます。」
私の過去がバレてしまっては
こうするしかない。
特にこの王子様に知られてしまったことは
私にとっては大打撃であった。
「君はここを辞めて、
どうする気だ?」
そんなのもちろん、
「死ぬわ。」
「え?何を…」
「私にはもう何もいないの。
愛する家族も守りたい何かも。
私はただ貴方を殺すためだけにここに来たの。」
抱き締められた手を無理矢理振り払って、
今にも泣きだしそうな自分を必死に抑え込む。
「今僕を殺せばいい。
殺せるなら殺せばいい。」
「もう、いいわよ。」
私は王子様を取り残し、
自分の部屋に戻った。