隣の雪水
Ⅰ
ボロアパート
ここミヤコ荘101号室は私の立派な部屋だ。
たとえどんなに隣が御立派なお屋敷で、
ミヤコ荘の存在がほとんど周りに知られていなくとも。
胸をはって言える、
ミヤコ荘が立派な”ボロアパート”だと。
これは決して嫌味などではない。
大家さんも優しい人だし、
他の住人さんもしっかりしている。
私、矢野 雪凪(ヤノ セツナ)は
このボロアパートの近くにある大学の二年生だ。
田舎から出てきた私にとって、
ここの地域は十分に都会で、
この家のボロさには何度も救われてきた。
一部屋ごとにキッチンがあるのに、
毎晩大家さんの部屋で夕食を食べる。
こんな生活が大好きで、
これがしばらく続くと思っていた。
昨日までは。