隣の雪水
その日はいつもよりも遅い夕飯だった。
大家さんが地域の集まりに参加していたからだ。
夕飯の買い出しを頼まれた私は、
暗い夜道を一人で歩いていた。
夜道と言っても、
ただ隣の金持ちの塀に沿って
歩いているだけなのだが。
ここは元々人通りが少ない。
通る人と言ったら、
ミヤコ荘の住人かこの金持ちの家の関係者ぐらいだろう。
だからこそ余計に話しかけられると、
びっくりするものだ。
「うちの学校の子…だよな?」
そう話し掛けてきたのは、
同じ大学の人だった。
「もしかして…瀬波くん?」
瀬波くんという人は、
大学で人気のある人で
こんな人通りの少ない場所で
ましてや一人でいるなんて考えられない人だ。
通称 タダのモテ野郎。
私とは無縁の世界人だ。
いつも周りには誰かが居て、
人気なのだろうけどとても近づきがたい雰囲気。