鈍恋diary
8回…このまま出ないで、なんてちょっと願ってしまう。
9回…後1回ってなんだか安堵した。
でも、10回目のコールは鳴らなくて…
『史華?』
耳元で聞こえたのは貴史君の声だった。
『…史華だよな?』
「あ、うん。ごめん、お風呂入ってて…着信あったから掛け直したんだけど」
『誰かわかってて掛け直した?』
なんか機嫌悪そうで、やっぱり掛けなきゃよかったと後悔する。
「確信はなかったけど、夏帆から聞いてたから…そうかなって思って」
『…ならいいけど、着信あったからって無闇に掛け直すなよ?』
「普段はしない…なんか用があるみたいだったから掛け直しただけ」
なんでわざわざ掛け直したのに、変な説教されなきゃいけないのよ!
やっぱムカつくは…コイツ。
『あ〜…悪い。ありがとな、掛け直してくれて』
「別に…で、なんの用なの?」
電話だとなんか素直?
ありがととか言われるとは思わなかった。
『それは…なんか悪かったと思って、謝っとかなきゃだから……ごめん』
「えっと…ごめん。なんのことかわからないんだけど」
あたし、貴史君になんかされたっけ?