鈍恋diary
なんの用だったのかよくわからないまま、博信君たちは去っていった。
もうすぐ駅に着く。
長いと思ってた10分は、博信君たちのおかげでなんとかなったけど…
貴史君を起こすって、問題はまだ残ったまま。
「…ねぇ、もうすぐ降りなきゃだよ?」
どうやって起こせばいいかわからなくて、とりあえず声を掛けてみたけれど…
貴史君は無反応。
「ちょっと、降りなきゃヤバいんだけど?」
未だに握られたままの手を引っ張りながら声を掛けても、無反応。
こんな場所で熟睡してるとか、信じられない。
「ねぇ、起きてよ!…起きてってば」
肘で脇腹を小突いてみる。
「…うん」
やっと返ってきた反応は、寝ボケてるのかなんなのかわからない。
「寝ボケてんの?…もうすぐ着くよ」
乗り換えアナウンスも流れてるし、ちゃんと起きてるならいいんだけど…
貴史君は動かないまま。
「ねぇ、聞いてんの?降りなきゃいけないんだけど?」
様子を窺おうと顔を覗き込むと、まだ目は閉じたままで思わず溜め息が出てしまう。