鈍恋diary

「起きろって言ってんだから、起きろよ!」

右手は繋がれたまま…左手には鞄。

殴り起こすこともできないし、蹴り入れるしかないんだろうか…

「ホント起きてよ、昨日みたいになるから」

ギリギリでホームに飛び降り下車とか、二日連続ではごめんなんだけど…

「…ん〜、何?」

「何じゃなくて…起きないと乗り過ごしちゃうから!」

速度を緩めた電車は、もうホームに滑り込んでる。

焦るあたしの心境なんて全く伝わってないらしい。

「貴史君、起きて!」

「…ん、起きてる」

やっと顔を上げた貴史君。

ちゃんと目を開けてるみたいで、ホッと息を吐く。

「ほら、着いたから」

油断したら、また昨日みたいに焦ることになりそうで…

あたしは貴史君の手を引っ張って、立ち上がる。

「まだ寝ボケてんの?降りるよ!」

立とうとしない貴史君を振り返って、反射的に睨んでしまう。

「…史華って、俺にはそういう顔しかしないよな」

まだ寝ボケてる?

「いいから、立って!降りるよ!」

繋いだままの手をギュッと握って、あたしは貴史君を引っ張ってドアへ向かう。

貴史君は立ち上がって、着いてきてくれてる。

< 85 / 197 >

この作品をシェア

pagetop