鈍恋diary
「起きろって言ってんだから、起きろよ!」
右手は繋がれたまま…左手には鞄。
殴り起こすこともできないし、蹴り入れるしかないんだろうか…
「ホント起きてよ、昨日みたいになるから」
ギリギリでホームに飛び降り下車とか、二日連続ではごめんなんだけど…
「…ん〜、何?」
「何じゃなくて…起きないと乗り過ごしちゃうから!」
速度を緩めた電車は、もうホームに滑り込んでる。
焦るあたしの心境なんて全く伝わってないらしい。
「貴史君、起きて!」
「…ん、起きてる」
やっと顔を上げた貴史君。
ちゃんと目を開けてるみたいで、ホッと息を吐く。
「ほら、着いたから」
油断したら、また昨日みたいに焦ることになりそうで…
あたしは貴史君の手を引っ張って、立ち上がる。
「まだ寝ボケてんの?降りるよ!」
立とうとしない貴史君を振り返って、反射的に睨んでしまう。
「…史華って、俺にはそういう顔しかしないよな」
まだ寝ボケてる?
「いいから、立って!降りるよ!」
繋いだままの手をギュッと握って、あたしは貴史君を引っ張ってドアへ向かう。
貴史君は立ち上がって、着いてきてくれてる。