私だけの魔法の手。
「ねぇ、終電来るよ?」
男の子の肩を揺すって、膝を叩いて、必死に声を掛けるけど。
よっぽど疲れているのか、んーっと身じろぐだけで目を開けてくれる気配はなかった。
「あー、もう!…ねぇ、君!…電車、電車来たから!」
ホームに電車が入ってきて、少し乱暴なくらいに足を叩けば。
薄っすらと開いた目が、あ、という声に重なった。
私だって戻らないと、終電に乗り損なってしまうから焦っていて。