私だけの魔法の手。
4
駅から直結のマンション。
エントランスを抜けてエレベーターホールでハッとする。
「あ、あのさ、もう平気だよね?」
「ん?」
「私、タクシー拾って帰るから」
「そんな訳にいかねぇだろ」
「え?……あ、いや…うん、大丈夫だから」
そう言って手を解こうとしても、珈琲くらいご馳走させてよ、そしたら送ってくし、と言って離してはくれなかった。
なんだか分からないままに部屋にお邪魔すれば、新人の男の子がこんな所に住めるの?っていう当然の疑問に首を傾げる。
物のあまりない無機質な室内からは、都心の夜景が驚くほどに近いのだ。
あれ?っと、自分の中のモヤモヤに首を傾げれば、珈琲入ったよ?と後ろから声を掛けられる。