私だけの魔法の手。
「ありがとう…って、ちょっと!さっき、送ってくれるって!」
振り返った私の視界に、缶ビールを煽っている姿が飛び込んできた。
送ってくれるって言うからその気になって図々しくもお邪魔したのに、ちょっとどうなってんの?
「あ、俺、元々酒飲んでたし」
ごめんな、って悪びれもしないで笑顔。
「ちょっとなんなのぉ?」
と、脱力してその場に座り込んでしまった私の前に、缶ビールをテーブルに置いたその子が近付いてきた。
「ごめんね?既成事実、作りたかったから?」
「え?」
すぐ目の前に同じように座り込んだその子が、疑問系で口にした言葉の意味を理解するよりも前に。
傾けた顔が近付いてきたと思ったら、目を閉じる間もなく、唇が塞がれてしまった。