私だけの魔法の手。
「美優ちょっとごめん」
「あ、はい…」
棚から取り出したカット用のエプロンを広げられて、袖を通せば苦しくない?と鏡越しに聞かれる。
はい、と頷くとククッと笑われて、なんで敬語?とか呟いていた。
だって!
新人だと思ってたのに!年下だって思ってたのに!!
聞かなくたって分かる。
この人こそがあのお店のオーナーで、カリスマ・ヘアメイクアーティストの蒼-sou-に違いないのだ。
さっき本名は「あお」、とわざわざ口にしたのは、お店で名乗っている蒼-sou- という名前が、本当は「あお」と読むからなのだろう。