私だけの魔法の手。
「はい、終了……ん、可愛い」
背後から髪の両サイドをサラッと確かめるように指先で流されて、鏡越しに目が合った蒼は、満足げな笑みを浮かべた。
時間にしたらほんの十分足らず。
切られた髪の量だってそんなに多くはないのに。
カットに行けなかったせいで重たかった髪が、嘘みたいに軽くて、しかもなんか可愛いし。
エプロンを外して後ろも鏡越しに確認すれば、文句のつけようのない蒼の仕事ぶりに、感動すら覚えてしまった。
「それで、だ美優」
そう言った蒼は、私の座るイスと鏡の間に回り込んで。
長い足を持て余すようにして、前の棚の部分に浅く腰掛ける。
「決まった?」
「あの…」
「なぁ…どう?少しは、癒されてくれた?」
と、首を傾げるようにして、瞳を覗き込まれた。