私だけの魔法の手。
「っていうか無理!」
思わず私が口にしたのはそんな言葉。
俯いて、スカートをギュッと握って首を振った私には、蒼がどんな顔をしているのかも分からなかったけれど。
「だ、だって……ドキドキしすぎて変になる!」
と、心のうちを勢いのままに吐露すれば、頭上でブハッと、蒼が噴き出すのが分かった。
「ビックリさせんなよ…」
そう言った蒼は身体を起こして、私の座るイスの背もたれに両手を乗せる。
当然密着するようにして囲われてしまって、ギューッと目を瞑った私の髪に、大きな手のひらとキスされる感覚。
「美優」
聞いた事もないような、甘い響きを持った自分の名前に胸が締め付けられて。
恐る恐る見上げた視線の先で、ニヤリ、と歪んだ笑みを向けられる。
無駄にいい男の意地悪な顔は、平凡な女には少々刺激が強すぎる。