カノジョの心  カレシの想い
 それなのに。

 目の前の彼女はいつまでも無言で、すごく困った顔つき。



 照れていて返事が出来ない、とはちょっと様子が違う。



「・・・・・・柏木?」

 そんな柏木の様子に心細くなって、名前を呼ぶ。



 すると、返ってきたのは

「ごめんなさい」 

 という返事だった。



 本当に済まなそうな表情付きで。







「え?
 どうして?」

 てっきりOKをもらえるものだと確信していた俺。


 戸惑いを隠せない。


「・・・・・・なんで、謝るんだ?!」




「あ、あの・・・・・・。
 私、好きな人がいるから。
 だから、大橋君とは付き合えない」



 それだけ言うと、彼女はパッと身を翻し、階段に続く扉の奥に消えてしまった。
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