カノジョの心  カレシの想い
 夜の10時ちょっとすぎ。

 俺は店の裏口に向かっている。




 ちょっとドキドキしながら薄暗くて細い道を抜けると、ちょうど出てくる彼女の姿が見えた。


「柏木・・・・・・だよな?」




 声をかけると、驚く彼女。

「大橋君?」


 立ち止まったまま、戸惑った声で俺の名前を呼んだ。


 近付いてみると、声だけじゃなく、表情も戸惑っていて。





―――ま、そりゃそうだよな。
   いきなり、バイト先に来たら普通は驚くか・・・・・・。





 でも。

 ふざけた気持ちで、ここまで押しかけたわけじゃない。





 俺は真面目な顔になる。


「この前の話の続きをしようと思って。
 学校だと、お前逃げるし」



 見る見るうちに、柏木が困った顔つきになる。

「その話は、もう・・・・・・」


 彼女のセリフを遮るように、正直に思いをぶつけた。

「でも俺は、柏木の事あきらめられない!」




―――だから、俺を見てくれ!
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