カノジョの心  カレシの想い
「え?
 なんですか?」


 少しだけ腕を緩める。

 腕の中に彼女は閉じ込めたまま。




 彼女はきょとんとした瞳で、俺を見上げている。





 そのあどけなさが可愛くて、微笑みながら言った。


「客に笑いかける由美奈ちゃんを見て、自分の心の狭さに気がついてさ。
 ・・・・・・客にまで嫉妬してるよ」




 年上の余裕なんて、どこかに置き忘れてしまったようだ。




 にこやかに対応するなんて、ホールの仕事としては当たり前なのに。


 彼女のあの笑顔は、恋愛感情を含まないものだとはわかっているのに。





 それでも、俺の心は波立つ。
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