カノジョの心  カレシの想い
 俺が微笑みかけても、由美奈ちゃんの顔から不安の色は消えない。


「仕上げに無糖のココアパウダーを使ったから。
 それで、苦くなりすぎちゃったのかも・・・・・・」


 泣きそうな顔になる由美奈ちゃん。


「ごめんなさい。
 ごめんなさい」

 小さく何度も繰り返す。




「ううん、気にしないで。
 俺が甘くしないでって言ったんだからさ」


「でも・・・・・・」

 由美奈ちゃんはまだしょげている。






 俺はあることを思いついた。

 
「じゃ、口直しさせてもらおうかな」


「え?」




 きょとんと見上げた由美奈ちゃんのあご先にそっと手を添えて、少し上を向かせる。




 そして俺は、そっとキスをした。





 ちょっとほろ苦くて。





 だけど。


 極上に甘いキスだった。
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