海風の如く




幹部になんとも言えない苦悶の表情が浮かぶ



「どうする、歳?」



「どうするっつったって、俺たちは会津や所司代から命じられなきゃ動けねぇよ」



もどかしいが、その通りなのだ



新撰組は会津中将お預かりで、京都守護職という役割



命じられてもいないのに、簡単に動くわけにはいかない



──どうする?



このままでは一週間遅いだけで、禁門の変は起こってしまう



今の新撰組の立場では恐らく所司代に言っても無視され、史実通り九条川原に向かうことになるだろう



だが、それでは間に合わないのだ



蛤御門を襲撃されることも、京の町が焼かれることをも防ぐことは厳しくなる




「湊上君、この状況をどう捉えますか?」




煮詰まっていた中、華蓮に意見を求めたのは山南




「知っていることがあるのなら、我々にも教えて欲しいのですが………」




──なるほど




山南ほどの頭がいい人物が簡単に未来から来た小娘に意見を聞くわけがない



史実の情報を知った上で、考えたいということらしい



実に彼らしい提案だ




「わかりました、私も煮詰まっていたところです
未来で伝わっているこの事件についてお話します」




禁門の変とは、池田屋で殺された長州藩士の仲間たちが起こす事件



蛤御門と呼ばれる門を襲撃し、御所に討ち入ろうとする



その後薩摩藩と会津藩で撃退するのだが、町を火の海にされてしまう 



新撰組は九条川原で待機し、事が起こってから駆けつけ、事を起こした長州藩士は天王山で自刃したり、落ち延びたりする




一通り話終えると、土方が口を開いた





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