海風の如く




華蓮の言葉に全員が目を泳がせ、火事のことを思い出しているのがわかる



「確かに………そう言われるとそんな気もするが……結局お前は何が言いたい?」



「と、歳…………
何もそんな言い方をしなくてもだな」



しかしながら、なぜか土方はピリピリとした空気を醸し出していた



「いいんです、近藤さん
私の話し方が下手なんです……

えっと、私に風の神の力が使えることはみなさんご存知ですよね

ようは、私のように風を使える者がいるなら、火を使える人物がいてもおかしくないかと思うんです」



言い終わると、部屋が静まり返った



___わかってる、確かに非現実的すぎだ




だが、そんなことを言い始めたら、華蓮の持つ力だって同じ




今は常に最悪な状況を考え、どう回避し、新しい未来を作っていくか




どんなにおかしいと疑いたくても、こうするしかない



疑惑の声が上がる前に華蓮は続けた




「私の力でさえ信じがたいのに、これはさらに受け入づらいというのはわかっています

しかしながら、この結論に至った理由がまだあるんです


山崎さんに頼んですぐに山南さんと連絡を取りました
やはり長州の黒幕は得体の知れない、というか、名前すらも把握できないと返ってきました」



___帰って来てすぐに連絡を取っておいてよかった



説得したいとか、そういうわけではないけれど、せめて話をわかりやすくする必要がある




「未来では名前を隠すことなんて簡単です
個人のことも、個人情報として保護されていることがほとんどですから


ですが、この時代において名前どころか、正体が噂すらもされない、というのは極めて不自然です


そして、私が学んでいる歴史上でも、そんな人物に心当たりがないんです」




長州も薩摩も頭となる人物の名は知れている



だから、身元不明の人物の存在などあり得ないのだ






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