海風の如く



重たい空気が場を包み込んでいる



これは単純な話ではない





「身元不明の人物の登場………これは過去を変えてしまったから起こってしまった可能性があります


簡単に言うと、私の知っている未来では既に亡くなるはずだった人が今生きているならば、存在しないはずの人が今生きていてもおかしくはない、ということです」



もう、何がなんやら、華蓮にもわけがわからなくなってくる



ただ、わかっているのは____





「存在がどうこうよりも、その黒幕は、俺らにとって厄介者、ということで間違いないか?」



「はい、そうなります」




土方の飲み込みの早さは相変わらず




彼は決して、架空の話や空想の物語を信じるタイプではない




むしろ、それを毛嫌いするだろう





それでも、目の前にある事実と、情報と、そこから起こりうる可能性をしっかりと受け止めている




__やっぱり、とても強い人










「ちょ、ちょっと待ってくれ
そんなこと、本当にあり得るのかよ」



「すまない、湊上、俺もよくわかっていない」




永倉と斎藤はすぐに声をあげた





__永倉さんは考えるより体が動くし、自分の考えをハッキリと持ってる、それに斎藤さんはきっとこういう話を想像できないんだ…




無理もない



華蓮のいた現代は、本や漫画など空想の物語が多く出回っている



しかしながら、この幕末では、そのようなものはない







「もう少しわかりやすくしますね

例えば、沖田さんが私の知る史実では去年になくなってることとします」



「えっ、僕、本当は死んでるはずなんですか!?」



「違いますよっ、例えばって言ったじゃないですか!!!」



なぜその例えに沖田を使ったか、といえば、彼が後に結核で死んでしまうことを真っ先に考えてしまったからだが……



「続けます

しかし、沖田さんは今、生きている


ということは、私の知っている未来とは確実に違う未来になっていることになります



これはわかっていただけますか?」



『あぁ』




問題はここからだ








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