海風の如く
「そろそろ言い出すとは……何か聞いていたのか?」
咳払いをひとつして、土方は華蓮と山崎を交互に見る
「はい、少し前に湊上から相談はされていました
情報のどこまでが真実で、どこからが飛躍なのか自分の目で確かめたい
そのためには、自分で情報を集めるために動きたい、と」
どんどん焼け事件が終わった辺りに一度山崎と話していた
華蓮の持つ風の力___白札を使って、自分自身で情報を集め、見定めたい
しかしながら、それはかなり危険な行為だ
もし、どこかに潜入したり、危ない情報を知ることとなれば、命が狙われることもある
そして、華蓮は女であるから、いくら体術剣術共に優れていたとしても、リスクが高いことに変わりはない
だから、山崎は条件として土方の了承を取ってくることを挙げたのだ
基本的に土方がそんなことを許すわけがない
それをわかっている華蓮は、この話を持ち出せる機会をうかがっていた
「____蓮
それが、どういうことだかわかっているのか?
山崎のしている仕事に失敗は許されない
なぜなら、失敗すれば自分が死ぬことになるからだ
それを、俺が許すわけねえだろ」
この一言には、幹部の誰も、何も言えなかった
山崎は新撰組の幹部ではないが、存在はほぼ幹部と同じだ
その情報収集能力と身体能力にはみんな一目置いている
土方の圧力のある目線に押されそうになりながらも華蓮は口を開いた
__ここで、折れるわけにはいかない
土方さん、ごめんなさい
「わかっているつもりです
ですが、あの池田屋事件から私たちに、もう失敗は許されていません
だからこそ、多くの情報を手に入れ、それを自分の五感で判断して、行動したいのです
私の今持つ力ならばそれが可能だと考えています」
___そう、どこか一つ間違えた、なんてこと………もうできないんです
「お願いです
できる限りの手を尽くしたいんです
何かあってからでは遅い____
そのために躊躇なんてしてられません」