海風の如く
「……他にはもう何もないか?」
「はい、ないです」
華蓮が伝えたかったのはこれで終わりだ
「よし、近藤さん」
「なんだ?、歳、いきなり」
突然、土方が、いつもの余裕のある笑顔で口を開いた
「予定変更だ
これから、山崎と蓮とこっそり山南さんのとこ行ってくる
帰りは遅くなるか、泊まってくる
いいか?」
__え、今から!?
あまりにも急すぎる
それに山南は隠れ家にいるため、軽率な行動を起こし、会いに行くなどリスクが高すぎる
「外出許可なら出すが………大丈夫なのか?」
近藤も突然のことで動揺している様子だ
「あぁ、俺がヘマをするわけねぇだろ」
切り札がバレてしまう危険があるにも関わらず、土方の様子は変わらなかった
___何か考えがあるのかも
そんな予感がしていた
「わかった、行ってこい」
「あぁ
山崎、蓮、支度をしろ
すぐに出るぞ」
ポカンと見ている他の幹部を差し置いて、土方は立ち上がり出ていった
『御意に』
『わ、わかりました』
戸惑いながらも、返事をするしかなかった
黒のなぞめく組織が動いてるのであれば、こちらも動いてやろうと、恐らくそういうこと
___敵わないなぁ
彼は武士の身分ではない
だが、心からホンモノの武士だと思える
状況判断をし必要なことを考え、志を曲げず、自分の信じたことをそのまま行動にうつせる
そして、周りを巻き込ませられる力も持っている
華蓮は支度をしながら、そんなことを考えていた
___私も負けてられない
状況は芳しくないが、希望を必ず見つけ出す
華蓮は土方とそんな道を探していこうと改めて誓っていた