海風の如く




外見は古そうな小屋



しかし、中には少し小さめの和室や勝手場が綺麗に備え付けられていた



二人くらいなら十分に暮らせるように思えた






「思ったより住みやすいですよ」



そんな土方と華蓮の考えが伝わったのか、山南はそう言うと、ゆっくりと座った




同じようにして、招かれた3人が座ると



「失礼します」




華蓮よりも高い声



品のある京都弁が聞こえた



__スッ



動作に一つの無駄もなく、ここが隠れ家とは思えないほど、絵になる女性



「みなさまにお茶をお持ちしました」



そう言って、おぼんの上に乗ったお茶をそっと差し出した




「そうか、皆さんに紹介しませんでしたね
私の妻の明里ですよ」



「明里と申します
皆様、このような遠くまでご苦労様でした
どうぞごゆっくりしていって下さい」



山南に紹介され、明里は深々と頭を下げた



「山南さん、随分いい女をかっさらったじゃねえか」



「っ土方さん!!!!
どうしてそういう言い方するんですか!」



「俺は思ったままを口にしただけだ」



土方にしてみればそうなのかもしれないが、確かに言い方は問題である



「いいですよ、奏上君
かっさらった、という言い方も間違いではありませんしね

ですが、こうなったのは__奏上君、あなたの提案でしょう?」





__その通りだけれど



それは山南が屯所を離れると提案したころに遡る________









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