海風の如く



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__山南さんの想いはわかったけれど…



一人だけ遠く離れて、という決意はそう簡単にはできないだろう


しかも自分は死んだことになるのだ




「……山南さん、確か親しくしている芸子さんがいましたよね?」



「………!?、なぜそれを…?」




部屋には華蓮しかいないことがわかってはいるが、山南は明らかに動揺していた



「そんなの………私だから、に決まってるじゃないですか」



そう、未来から来た、華蓮だからこそ知っている



まあ、正確に言うと、そうではなく、華蓮の鋭い観察眼によって見抜かれていた、いや、姿を見かけていた、が正しいが…


__それはあえて言わないでおこう




「なるほど、不意をつかれましたね

明里がどうかしましたか?」




「一緒に連れていってあげたらどうですか?」




________




「…………え?」




山南のこんな表情は今まで一度も見たことがなかった



目を見開き、何も言えないでいる




「せ、説明不足でした、すみません……



私の知っている史実では、山南さんは明里さんと死に別れてしまうんです




ですが、この未来ではそうはなりません

そのために、山南さんがここを出る決意をしてくれました




でも、このまま明里さんに黙っていたら、明里さんは悲しい思いをしてしまうでしょう



山南さんが戻ってくる頃には、好きでもない人のところにいるかもしれません



だったら、今がいい機会だと思うんです




……それに、夫婦で住んでた方がバレにくいし、誤魔化しがきくと思いませんか?」




___自分でもわかっているけど



ほとんどが華蓮のおせっかいにすぎない



最後の一言は山南が頷きやすいように付け加えたのだ



___それでも二人に幸せになって欲しい




そんな想いを込めて、山南を見つめ返した











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