海風の如く




___ガラガラ



「いらっしゃい、降られましたねぇ
今日は空いてますが、部屋はいくつで?」



宿の主人は気前の良さそうな男で、華蓮と土方に手拭いを差し出した



「一部屋でいい」



「ありがとうございます、二階の一番奥をどうぞ」




言われるなり、すぐに階段を上って部屋に入った



華蓮は座っていいのかわからず、立ったまま、もらった手拭いで髪を拭いていた



土方は小さな机の近くに座り、何やら考え事をしている








「…………………」



「…………………」




___こんなに気まずくなったことあったっけ?



毎日同じ部屋で寝起きしているのに、いつもと違う場所、というだけでこんなにも気まずくなるのだろうか



もちろん原因の大半は気まずい雰囲気を作り出している土方にあるのだが…



そのことにお互い気づいてはいない









「………あの、土方さん………………」




「なんだ?」



いつもなら必ず華蓮の方を向くのに、今は背を向けたままだ






「………体を洗ってきます
土方さんも風を引く前に行ってきて下さいね」






この空気に耐えられなくなった華蓮は、出ていく方法を選んだのだった





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