海風の如く
「………俺一人ではお前を、いや、お前の持つ力と可能性を支えてやれない」
土方は俯いた
「お前が成し遂げたいと志していることを、確実に成功に導くためには、多くの情報、多くの協力が必要だ
それは俺もわかっている
だが、俺一人では支えてやれねぇって言うのが、こう、どうも悔しくてな」
「土方さん……………」
土方の偽りのない正直な言葉は、華蓮の胸に深く刻み込まれた
彼の気持ちは痛いほどよくわかったからだ
この時代に来たばかりの頃、華蓮は認めてもらいたくて必死であった
自分にできることが、こんなに小さなことだけなのか、と悔しい思いもした
それからも、風の神の力を知るまでは、自分にはどうしようもできない、力のなさを痛感する出来事はいくつもあった
___でも、土方さんは力のない人じゃない
二年前よりもはるかに人数が増えた新撰組を誰よりも厳しい態度を崩さず束ねて
局長である近藤の右腕であり、未来から来た華蓮の恋人であり、華蓮と意見を交わせ、新しい未来を切り開いていくための新撰組きっての頭脳だ
「………土方さんは力のない人じゃありません」
「____華蓮?」
「私、土方さんに一番頼っていると思います
それは土方さんが、頼れる人だから
だから私は……甘えてるんだと思います」
華蓮は必死に言葉を紡いだ
「上手く言えないのですが……………
これからの道を切り開くために土方さんの力は絶対に必要です
それに…………
私にとって土方さんは仲間とは別の意味でたった一人の大切な人です」