海風の如く





──ダダダダ



「失礼します、伝令です!!」



入ってきたのは平隊士



華蓮はとっさに身を隠した



幹部の会議に身元もわからないただの隊士がいるとなれば怪しまれてしまうからだ



慌て方からして、大事であると察することができるし、命令がどこからなのか、内容までもわかる気がしたが、平隊士の言葉を待つ



「会津中将様より、総力をあげて出陣せよ、とのことです!!!」



『っな!!!』



なんというタイミング



だが、それがいいか悪いかはこの先の行動によって決まるのだ





「……伝令ご苦労、隊士たちに出陣の準備をするように伝えろ
原田と新八は動ける隊士の数を把握して報告、斎藤は今までどおり長州の動きを詳しく探るように観察方に伝えてくれ」



『承知!!』



指示された人たちがバタバタと部屋を出て行く



「あとは屯所か………」



ボソッと小さく一言漏らす土方に隣にいた山南が応えた



「私が残りましょう」




──あぁ……そういう意味か…



屯所か、というのは手薄になった屯所襲撃の可能性も考えて、誰かを残らせるということだったのだ




「山南さん!!、本気で言ってんのか!?」




新撰組の総長である山南がこんな大戦にただ屯所待機をするというのは、よほど珍しいらしい



しかし、山南は穏やかな表情で返す



「屯所を襲撃されては困りますしね
それに、土方君は最前線にいた方がいい
私は伝令を走らせることや、他のことを受け持つ方が良さそうです」



一切の曇りなく言い切る山南に土方は折れた



近藤もその様子を優しく見守っている




「では山南君、屯所を頼む」



「はい、承知しました」



苦虫を噛んだような表情の土方をよそに、局長と総長は頷き合っていた






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