海風の如く




このようにして、華蓮の知る禁門の変が起こる七月十九日から一週間後の七月二十六日



新撰組は出陣することになったのである








留守を任された山南は、幹部を含む一隊を残すことを提案し、それに藤堂を指名した



藤堂は山南と同じ北辰一刀流の免許皆伝者



この大戦に誰もが行きたがるのは男ならば当然という状況で、同門の人間には頼みやすかったのだろう



もちろん、初めは藤堂もいい顔をしなかった





「えーっ、俺、留守番なの?」



巡察から戻った藤堂に早速土方と山南が説明した



「まあまあ、頼みますよ
それに屯所を守ることも隊務です」



それだけではなく、八番隊は先ほどまで巡察に出ていて疲れているから、というのもあるかもしれないが



「……山南さんにそんなふうに言われたら、納得するしかねぇじゃん

わかった、屯所は任せてくれ」



土方が思っていたよりも、案外あっさりと藤堂は承諾したのだった












──スタスタスタ



何か不穏な空気が漂っている京の町を浅葱色の集団が駆け抜ける



本来ならば、ここは所司代へ先に向かうのだが、田舎侍だと追い返されることは見え見え



よって、会津藩が陣を張っている場所へと向かっていた





「大丈夫ですか?」



真夏であるこの時期に、隊服、甲冑を身につけて動くというのは想像以上に辛い



そして、忘れてはならない



華蓮はまだ17歳の女の子なのだ



体に無理をさせているに決まっている



そんな華蓮の様子を沖田は隣で見ていた





「まだまだ、元気ですよ
沖田さんこそ、池田屋の時みたいに倒れないでくださいね」



そうやって、心配をかけるまいとニコリと笑うことも沖田は見抜いていた




──この子はなんて強いんだろう




当たり前だが、体力も剣の腕も沖田の方が上



でも何故だか、いつも負けているような気がするのだ



華蓮には目に見えない強さがある



神から授かったという風の力ではなく、何か別の強さが───




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