海風の如く
土方は華蓮を見つけたはいいものの、安全な場所に待機させるか悩んでいた
──どう考えても、ここにコイツはいない方がいい
邪魔だとかそんなことではなく、ただ気がかりなのだ
だが、それは土方の私情
最終手段の華蓮を戦場から遠ざけることはリスクが高い
土方は心底嫌な気分になっていた
「土方さん……?
私はここにいますからね」
そんな考えなんて、華蓮にはお見通しらしい
──本当、参った
ため息をつくと、意気込む華蓮に向き合う
「わかってる……ただ」
──気がかりなんだよ
最後の一言を飲み込んだ
これを口に出せば華蓮に誤解を与えかねない
「ただ………?」
華蓮が顔を覗き込んできた───その時
──ドォォォン
──ゴォォォォオオオ
「火だっ!!
火をつけられたぞ!!!!!!」
「早く逃げろーっ!!」
本当に京の町に火が放たれたのである
「土方さん、蓮っ!!」
「永倉さん、これはどういうことですか!?」
もし長州藩が逃げ出したとすれば、永倉にはわかったはずだ
普段はおちゃらけていても、仕事に支障をきたす人ではない
「それが、わかんねぇんだ!!
撤退準備をしているようには見えねぇ!」
「なら、この火の中、御所を襲うのか!?」
永倉の一言に土方も思わず声をあげる