海風の如く
──ゴォォォォオオオ
江戸時代は未来とは違い、建物同士の間隔が狭い
そして完全な木造建築
つまり、火はあっという間に燃え広がってしまうのだ
「水をかけろ!!
中にいる人を助けるんだ!!」
土方が声を荒げる
消火器や、ホースなんて便利なものもないから、消火活動はバケツリレー方式
当たり前だが、容量は悪い
既に、手に負えなくなろうとしていた
──バタバタバタ
何人もの人が走り回り、辺りは恐怖の色に染まる
火の勢いが強く、新撰組を含め消火活動していた集団も退却を余儀なくされた
「クッソ………」
原田は槍の柄の部分を強く地面に叩きつける
長州の残党を捕らえきれず、戻ってきた永倉も刀を強く握りしめている
長州がどのような動きをしてくるか把握していてこのザマだ
華蓮だってもちろん悔しい
──このまま見てるだけなんて…………
華蓮は顔をあげると、思い切って頼んだ
「土方さん、原田さん、永倉さん
人気のないところに行って私を隠してもらえますか?」
後はもう、華蓮にしかできない
「………蓮」
土方は華蓮があの力を使うことに引け目を感じていることを知っている
本当は使わせたくないのだが、ここで止めてもきっと華蓮は聞かない
そんな心中で、発した一言だった