海風の如く
悲惨な現状
それから丸一日
華蓮の知る史実では蛤御門が襲撃され、京の八割が燃えるはずであったが、蛤御門は無事であり、火事の被害も思ったより少なくて済んだ
そのため禁門の変という言葉はない
それに気づくと、歴史を変えたという実感が沸いてきた
ただ、長州が予想外の動きをしてきたのは事実
よほど頭のいい人が指揮をとっているか、入れ知恵をしているのだろう
華蓮はこの先のことを思い、簡単にはいかなそうだと肩を落としていた
「蓮さんっ!!」
「……沖田さん」
沖田は華蓮に走り寄る
沖田は近藤を守り抜き、土方の命をきちんと遂行した
今、近藤は会津藩の容保公に呼ばれているため、土方と共に不在だ
そして華蓮と沖田は残党がいないか見回りながら、必要な時には人々に手を貸している
風の力を使ったとはいえ、燃えてしまった家も当然ある
新撰組はそんな人々の光になろうとしていた
「父上、母上……!!!」
泣き叫んでいるのは先日、巡察中に出会った男の子
その目の前には黒く焦げた人の遺体が二人分横たわっていた
亡骸に触れようとしているその子の手を思わず引き止めた
「触れてはダメっ!!
君の手が火傷を負ってしまうよ」
すると男の子はゆっくりと顔をあげて、華蓮と目を合わせた
「……新撰組?」
その目に生気はほとんど感じ取れない
「…うん」
「なんでや」
───!!