海風の如く
──ゴツン
言い終わると、上から拳骨が落ちてきた
ヒリヒリとする部分を手でさすり、拳骨を落とした本人をジッと見やる
「なにが、考えが浅はかでした、だ」
語尾にふんっと、鼻息をする勢いで言う
「む……どういう意味ですか?」
華蓮だって反省した上での発言であったから、そんな土方の言動に納得いかなかった
そのまま、土方の真意が明かされるのを待つ
「言っただろうが、一緒に背負うと」
その言葉で思い出した
祇園祭の日、あの高台で
二人だけで約束したこと
──そっか、私は気負いすぎていたんだ…
「やっとわかったか
知恵なんてモンはみんなで搾り出せばいいんだよ
そのための俺たちで、そのための組織だ」
「………はいっ」
力があると、どうしてもそれに固執して、大事なことを見失ってしまう
未来から来ていようが、神様の力が使えようが、華蓮は華蓮
新撰組の一員であって、たくさんの仲間がいることには変わらないのだ
遠回しだけど、そう伝えようとしてくれているのがわかって華蓮は嬉しかった
「わかったなら飯食って早く休め」
土方はゆっくり立つと襖の方へ近づく
「お出かけですか?」
「ああ、近藤さんの所行ってから外に出てくる」
飯、と言うからには土方も一緒だと思ったのに……と残念な気持ちになる
「……それと」
襖に手を駆けて、土方はまた何かを言いかけてやめた
「………なんでもねぇ、じゃあな」
それだけ言い残すと、足早に部屋をあとにした
「……ヘンな土方さん」
華蓮もゆっくり立ち、夕餉を作るために勝手場へと向かった