海風の如く




沖田は華蓮に苦笑いを向けてから、空を仰ぐ



夏というにも関わらず、肌はあまり焼けていない



歴史上では、沖田総司は色黒のヒラメ顔というのが一般的だが、それは間違いなのだろうか



と感じるほど、沖田は色白だ





沖田といえば、先月の池田屋事件で倒れたのだが、その後は何事もなかったかのように過ごしている



これもまた、歴史上では池田屋事件で吐血して戦線離脱するということで有名だが、華蓮が見た限り、吐血した様子はなかった



もう一つの説──熱中症で倒れた、ということかもしれないと自己解決している



しかし、油断は禁物



沖田総司はこの後労咳、現代でいう結核にかかってしまうのだ



華蓮はそれが発症しないように滋養のいいものを作ったりしているのだが、労咳にならない保証はない



ただ、気になるのは一つ







癒やしの風の力は病気を癒せるのだろうか





ということ



それが本当であれば、池田屋事件の時に沖田の中にあった労咳は治っているはずだ



ただ、確かめる方法はない



このまま発症しないことを祈るだけだ







「私は大丈夫ですよ
そう言えば、沖田さん……
池田屋の時に倒れてましたけど、体調はどうなんですか?」



咳をしているところを見かけたことはないが、気になるものは気になるのだ



「それがですね………
嘘みたいに元気なんですよ!

あの時は暑くて、だるくなってたんですけど、今はなんとも」



その笑顔に曇りは見えない



──今はその言葉を信じるしかない、よね




「そうですか…よかったです」



華蓮もニッコリと笑い返した





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