海風の如く
──ザッ
全員揃って、列を整えてからの一歩
華蓮はこの瞬間が好きだ
巡察は何が起こるかわからない
行ってそのまま帰ってこれない可能性もある
だが、そのなんとも言えない緊迫感からの一歩が、空気の変わる瞬間が好きだったりするのだ
──それにしても、また新入隊士か
──新撰組ってどこまで増えるっけ?
さっき聞いた話が妙に耳について離れない
何か引っかかる気がしていた
しかし今は巡察中、余計な雑念は思わぬ事態を引き起こしてしまうことになりかねない
そうわかっていても、思い出してしまっていた
──ん!?
近頃、近藤も帰ってくる
そして、新入隊士
一番最初に江戸へ向かった藤堂
───まさか!!!
「っ沖田さん!!」
これは一刻を争う事態
「何ですか?、突然」
「すみません、急いで土方さんに報告しなくちゃいけないことがあるので、戻ります!」
「えっ!?」
驚く沖田を放って、来た道を全速力で走る
──私は、何をしていたんだろう!!
この時期に起こる出来事をすっかり忘れてしまっていた
この隊士募集に現れる人物こそ、新撰組を引っ掻き回す張本人
──なんで、こんな大事なこと………
だが、後悔するのはまだ早い
あの人が入隊するのはこの時期だと知っている
だから、それが今日でないことを祈るだけだ
──お願いだから、間に合って………!!
それでも嫌な予感はやはり消えない
そして虚しいことに、これが華蓮の進む道を大きく阻む壁となってしまうことになるのである