海風の如く




伊藤が入隊して数日後、新撰組は配置替えを行った



華蓮や組長の配置はほとんど変わらないが、平隊士が少し変わった



そして、伊藤は史実通り参謀となったのである



当然の如く、近藤、土方、山南のお三方に加えて伊藤も新撰組の主軸となったから、土方の小姓である華蓮も顔を合わせなくてはならなくなる



それでも小姓を続けるのは、土方のそばにいた方が安心であるし、何より土方のことが好きだからだ



土方もそれを望んでくれて、小姓を続けている



こんなご時世の中でも、幸せだと感じられることだった









「………華蓮」



──夜


華蓮も土方と同じ部屋で寝起きしているから、二人きりだ



「なんですか?」



「伊藤には気をつけろよ」



「はい」



土方も伊藤の雰囲気を感じ取っているのだろう



華蓮も重々承知しているつもりだ





「……ほんとにわかってんのか?」



「えっ…はい、一応私は未来から来ているので、伊藤参謀がすごく頭のいい人だってわかってますよ?」



「………はぁ、そうじゃねぇよ」



土方にため息をつかれる意味がわからない



「あのな、お前は女なんだ
そんで伊藤は男だろ?
バレたら何されるかわかんねぇ
お前の生きていた時代と違って、ここでは女の自由はないに等しい
されるがままが当たり前だ」



「っ………」



ここまで丁寧に言われれば、何が言いたいのかわかる



「体術に覚えがあるからって、あんまり男をなめるなよ

まあ、できるだけお前の側には誰かしらいるようにするがな」



スッと引き寄せられて、土方の腕の中にすっぽり収まる





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