海風の如く




「えっ、土方さん………?」



土方に触れられてドキドキしてしまうが、その前に




「だ、だめです
そんなことをすれば、伊藤参謀に私のことを怪しんで下さいと言っているようなものでしょう」



皆が寄ってたかって守っているようだと、余計に目立つ



「お気持ちは嬉しいですけど、ほどほどにして下さい」



言い終わると、土方の舌打ちが聞こえた



「……そんなに信用ならないですか?
伊藤参謀をかわすくらい、私にだってできます」



それに伊藤が興味を抱いているのは、近藤と新撰組のことだ



「……ったく、勝手にしろ!!
こっちがどんな気でいるか知らねぇで」



「…ふふっ」



華蓮の強気な宣言に少し拗ねた土方が愛しいと思った



──ちょっと可愛げなかったかな



この時代では、女がしゃしゃり出たりすることはほぼない



華蓮が未来から来た、と言い聞かせているから土方も華蓮の主張を尊重しているのだろう



「わかってますって
いつも心配かけてすみません

でも、大丈夫ですから」



ほらね、と笑って見せても土方の眉間に寄ったしわは取れない



これはいくら言葉にしてもダメそうだと悟った



本当にやってみせなければわかってもらえないだろう



だが、それを実践するために、今の土方の機嫌をどうにかしなくてはならない



華蓮は恥ずかしかったが、最終手段をとった





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