海風の如く
「……もう、どんなに伊藤参謀が顔の整った綺麗な人だとしても、私が好きなのは土方さんですよ」
土方歳三という人物は、同じく外見も頭も優れた伊藤甲子太郎という人物をライバル視していたのだ
現代の頃の知識も、幕末に来てからのことも含めてそう思う
土方は伊藤甲子太郎の何かを恐れている
そんな気がしていた
そっと、土方の頬にキスをした
「……っ」
はじめは驚いていたものの、すぐに余裕そうな表情に戻る
「こんなんで、俺の機嫌が直るとでも思ったのか?
足んねぇよ」
最後は耳元で甘く囁かれ、全身が痺れるような感覚に襲われて、力が抜けた
「……んっ!!」
顎を持ち上げられると、そのまま口づけが落とされる
何度も、何度も
満月が雲によって半分ほど覆われていた夜
胸騒ぎがしていながらも、愛する人と触れ合える時間を幸せに感じていた