海風の如く




部屋の襖から差し込む光



以前は時計やアラームで気づいていたのに、今はそれだけで起床時間だとわかる



新撰組が伊藤一派を迎えてから1ヶ月



華蓮が過ごす日々はそう大して変わっていない






そう、変わったことと言えば───






「おはよう、湊上君
君は本当にいつ見ても可愛らしいね」



──また、か



伊藤が隙あらば華蓮を口説いてくるのだ



そのせいで、古株幹部──特に土方の機嫌が悪くなるので本当に迷惑している



「おはようございます、伊藤参謀
失礼ながら、可愛いと言われて喜ぶ男はおりません」



この台詞も何回目だろうか



「まあまあ、そう怒らないで
僕なりの褒め言葉だよ」



それだけ涼しそうに言うと何もなかったかのように去っていく



本心は華蓮のことをどこまで見抜いているのか知れない



だからできるだけこちらも隙を見せないように、言動には気をつけているつもりだ






「またですか、伊藤参謀も飽きない人ですねぇ」



「……沖田さん、また盗み聞きですか?」



いたなら、出て来てくれれば伊藤に話しかけられなくて済んだかもしれないのに



というのはただの八つ当たり



これは華蓮が上手く交わさなくてはいけないのだ





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