海風の如く




「だって、蓮さんは自分でなんとかするって言いますけど、いろいろ心配してるんですからね?」



「大丈夫ですよ、伊藤参謀だっていきなり取って喰うほど愚かではないでしょうし」



そんなことをすれば、どんな目に遭うかくらい想像がつくだろう



「………前から思ってましたけど、なかなか言うようになりましたよね
誰の影響かは伏せておきます」



「う…………
気をつけます………」



確かに仮にもこの新撰組の参謀に対して、かなりの暴言を吐いた



誰かに聞かれていたら大事だ







「さてさて、今日の朝餉は何でしょうかねぇ~」



「確か当番は斎藤さんですよね?
おいしいに決まってますよ!!」



他の人はともかく、斎藤は真面目で華蓮に料理のことを熱心に聞いてきたのでかなり上達したのだ



「一君か、盛り方まできっちりしてるんだろうなぁ」



「斎藤さんは真面目ですから」



「それも時と場合によりますけどね
まあ、一君のご飯が美味しいことは認めます」



──!!



沖田が素直に人のことを褒めるなんて珍しい



近藤や山南、井上以外はけなし放題なのだ




「私直伝ですからね、当然です」



えへん、と胸を張る



「そうですね、蓮さんのご飯もおいしいですから」



「えっ……」



同じように素直に言われると思っていなかったので戸惑う



「自慢しといて、褒められると対応できないって…………
ははっ、蓮さんは面白いですねぇ」



「っ、もう、行きますよ!!」



結局はいつもからかわれるのだ



華蓮は沖田の横を素早く通り抜け、広間へと向かった






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