海風の如く
「そうだったんですか……」
とりあえず納得してもらえたようで一安心
沖田も近藤が幕府のために働きたいことは知っているはずだ
この方法だと幕臣になることはできないが、幕府を守ることはできる
華蓮はそこを強く主張していた
つまり、幕臣になることだけが、幕府を守ることだけではない
この後、長州と薩摩を中心とする新政府軍は外国から最新の武器を仕入れて戦いに臨んでくる
それに幕府が勝てる見込みはほとんどない
ならば、幕府の人間が戦争で命を落として終わりを迎えるのではなく、将軍の命だけでも守る方法を選ぶべきだろう
坂本龍馬が考えたのと同じように
そして、近藤をはじめとする幹部上層部はこの案を受け入れてくれた
「まあ、僕の場合、立場とかはどうでもいいんですけどね……
近藤さんのために戦えるなら」
笑顔でさらっと言うが、きっとこの気持ちが沖田の全てを支えているのだろう
この一年と少し過ごしてきただけでも、それは十分にわかっていた
「それにしても、長州の動きが遅すぎるように感じるのは僕だけですか?」
池田屋事件以降、長州に不穏な動きがあるのは確かだが、まだ大きくは出ていない
厳戒態勢が維持されたままだ
「慎重になっているのかもしれませんね」
華蓮は軽く受け流す
だが、表面上だけ
もう七月も終わりに近い
あの大事件が起こるのは確か七月十九日だったはずだ
その日付を過ぎてもう一週間になる