海風の如く
「山南さん、でもそれは表舞台にはいられないってことなんですよ?」
切腹したことになる、つまり死んだことになるのだ
そして、新撰組の皆とも離れ離れになる
「勘違いしないで下さい
私はこの新撰組と共にあることをあきらめたわけではありません
必ず、生き残る
そのために必要な手立てです」
先をしっかり見据え、考え抜いた上で口にしたこと
それはこの言葉と態度で嫌と言うほど伝わった
山南は本気なのだ
「もう決めたことなんですね」
華蓮なんかに止められるわけがない
「心配しなくても、私は君のような無茶はしませんよ
むしろ、こちらの方が心配です」
「ったく、そこは安心しとけ
必ず呼び戻すから、待ってろよ」
土方も山南の決意に断念したらしい
「と、歳の言うとおりだぞ!
しかし、山南君がいなくなると寂しくなるだろうなぁ」
近藤はこんな時も近藤らしい
「大丈夫ですよ
必ず呼び戻してもらいますから」
────………
また、確実に未来が変わった気がする
山南は自分が新撰組に必要とされていることを受け止めている
その上で、表舞台から去ろうとしているのだ
より、新撰組のためとなりたくて
──もしかしたら史実とは違う道着々と進んでいるのかもしれない
華蓮は新たに一筋の光を見つけたのだった
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「湊上君は優しすぎるんですよ」
山南は前と同じ笑顔を作る
「私は新撰組と、この世の中のために最善を尽くしたい
それだけです」
「……でも、」
「仕方ないですね、少し近くに来なさい」
山南は華蓮がそばに寄ると、左手をそっと華蓮の頭の上に乗せた