海風の如く
「君が思っているほど、世の中は甘くない
私のような者が裏でいろいろやれば、君も動きやすくなるでしょう
大丈夫、湊上君は何も考えず、ただひたすら正しいと思うことをしてください
君ならやり遂げられる、そんな気がします」
──世の中は甘くない
グサリと胸に刺さる
たかが小娘ごときの力で、ほとんど手を汚さずに歴史を変えるなど不可能なのだ
それは華蓮も承知していて、いずれは使いたくない手を使うことも覚悟していた
ただ、どうしても勇気が出ず、未だそのようなことはしていない
山南はそれを自ら買って出ようとしているのだ
華蓮が自分が進みたい道を歩けるように
後々罪悪感に苛まれることのないように
「や、山南さん……
どうして私なんかのために………」
新撰組の皆とはずっと一緒にいたいと思ってきた
一人でも欠けるのは嫌だった
「どうして泣いたりするんですか……土方君に怒られてしまいますよ」
呆れ顔ながらも優しく笑う山南
「私はこっちの方が性に合うんですよ
それに……歴史を変える以上、君が知っている話とはどんどん違いが出てくる
その時々に対応できなければ、変えることなどできないでしょう
私の役目は、その手立てを作ることです
大丈夫です、必ず上手くやってみせます」
まるで、私にはその力がある、とでも言わんばかりの表情
「そこまで言われたら、何も言い返せません………」
「ふふ……それでいいんですよ」
山南にやることがあるように、華蓮にもやらねばならないことがある