海風の如く




「君が思っているほど、世の中は甘くない
私のような者が裏でいろいろやれば、君も動きやすくなるでしょう

大丈夫、湊上君は何も考えず、ただひたすら正しいと思うことをしてください

君ならやり遂げられる、そんな気がします」




──世の中は甘くない



グサリと胸に刺さる



たかが小娘ごときの力で、ほとんど手を汚さずに歴史を変えるなど不可能なのだ



それは華蓮も承知していて、いずれは使いたくない手を使うことも覚悟していた



ただ、どうしても勇気が出ず、未だそのようなことはしていない



山南はそれを自ら買って出ようとしているのだ



華蓮が自分が進みたい道を歩けるように



後々罪悪感に苛まれることのないように






「や、山南さん……
どうして私なんかのために………」



新撰組の皆とはずっと一緒にいたいと思ってきた



一人でも欠けるのは嫌だった




「どうして泣いたりするんですか……土方君に怒られてしまいますよ」



呆れ顔ながらも優しく笑う山南




「私はこっちの方が性に合うんですよ
それに……歴史を変える以上、君が知っている話とはどんどん違いが出てくる

その時々に対応できなければ、変えることなどできないでしょう

私の役目は、その手立てを作ることです
大丈夫です、必ず上手くやってみせます」



まるで、私にはその力がある、とでも言わんばかりの表情



「そこまで言われたら、何も言い返せません………」



「ふふ……それでいいんですよ」



山南にやることがあるように、華蓮にもやらねばならないことがある





< 63 / 126 >

この作品をシェア

pagetop