海風の如く
それから二ヶ月が経ち
元治二年年二月二十三日
史実通りの日に山南は脱走した
「総司、連れ戻してこい」
「………わかりました」
全員が緊張した面持ち
もうしばらくは、山南の姿を見ることができないのだ
いや、もし華蓮が失敗でもすれば、それは永遠に叶わなくなる
積極的な意味での脱走だとわかってはいても、空気は重かった
そして、山南はずっとひっそりと準備していた場所へと拠点を移す
島原で馴染みの明里という綺麗な女の人と一緒に
史実では、二人は一緒にはなれないから、それはかなり嬉しかった
まだまだ安心できる状況ではないが、明里と二人きりの生活を味わって欲しいと華蓮も願っていたから
「それじゃあ、皆さん、あとは頼みますよ」
今まで、冷たい態度を作っていた分、今日は優しく見えて
それが余計に涙をそそっていた
「ああ、そっちこそ気をつけろよ」
素っ気ないけど、相手を思いやっている土方の言葉
彼にとっても、頭脳の片割れがいなくなることは大きいはずだ
「私の代わりに、湊上君が頭脳として大きく貢献してくれるはずです
私はあなたならできると信じています」
「はい、必ず、また皆さんで笑いあえる日を迎えてみせます」
──どうか、その日まで
華蓮は堂々と歩いていく山南の後ろ姿を見送った