海風の如く
その日のうちに、山南が脱走して切腹となったことを隊士たちに知らせ、すぐに葬儀に取りかかった
そして、それから一週間も経たないうちに、西本願寺へ屯所を移転することが決まったのだった
「もう移転なんですか、思ったより早いですね…」
「沖田さんは荷物少ないからすぐに終わるじゃないですか」
一番隊は午前中に巡察であったから、さらに忙しい
「それを言うなら蓮さんだって……」
「忘れちゃったんですか?
私は土方さんの小姓なんですよ」
「あ………頑張って下さい」
そう、土方の荷物は書類やら、書物やら、手紙やらが多すぎる
今からまとめたって、明日の朝に終わるかどうか
小姓であるから、手伝わないわけにはいかない
「土方さんも、こうなることわかってるんだから、あらかじめやっておけばいいのに………」
「それができてたら苦労してませんよ…
それに…………
山南さんの存在は土方さんにとって、だいぶ大きかったみたいですから」
山南がいなくなってからというものの、土方は少し元気がない気がしていた
屯所の移転が早いのも、気持ちを切り換えたいからだろう
史実とは違い、死んではいないが、それでも同じ屯所にいるのといないのとでは訳が違う
それほど、土方は山南を認めていたのだ
「仕事もあんまり手についていないみたいですしね…」
それで、華蓮が移転の支度を手伝っているのだ
隣を見れば、沖田は何か考え込んでいるようで
「大丈夫ですよ、土方さんは」
パシッと背中を叩いた
元治二年三月
西本願寺にて、新たな生活が始まろうとしていた