海風の如く
参
刺激的な一日
──拝啓、お父様、お母様
私は今日、十八歳になりました
両手を合わせて目をつぶり、心の中で言い終わると空を見上げた
山南が屯所を去り、慌ただしく屯所を西本願寺に移転しているうちに
今日は三月十日
華蓮の十八回目の誕生日がやってきてしまったのである
──向こうにいる皆は元気だろうか
幕末に来て、もうすぐ二年になる
今も帰りたいという気持ちがないわけではない
ただ、どちらを取るかと尋ねられれば間違いなく今を取るだろう
それほどまでにこの時代に慣れ親しんでいる
ここの空気も人も、自然も
全てが華蓮にとってかけがえのないものと化していた
「よぉ、蓮!」
「なんだ、ぼーっとして」
「永倉さん、原田さんっ!!
おはようございます」
縁側に座って空を見上げていたものだから、気配に全く気づかなかった
「おう、ところでよ
お前、今日暇だろ?」
原田は少し言いにくそうに華蓮から目をそらせる
「はい、今日は巡察ないですよ」
──何か、頼み事かな?
とにかく、次の言葉を待った
「ちょっと、付き合ってくんねぇか?」
「え?
何にですか?」
「いいから、行くぞ」
急に二人に両手を引かれ、転びそうになりながらもなんとかついていく
「ちょ、ちょっと待って下さい!
外に行くなら許可をもらわないと!!」
どこかに行く場合は土方の了承が必要だ
『もう取ってある!!』
──え、早い…………
こんな時だけの二人の要領のよさに華蓮はただ驚いていた