海風の如く




いきなり現れて、連れてこられたのは京の町中


商売やらなんやらで賑わっている場所だ



「もう、どうしたんですか、急に」



二人を見れば永倉が、早く言えよ、と原田を急かしているように見える



「その……だな
女ってのは、何をもらうと喜ぶのかなぁってな」


──んー、なるほど



「おまささんへの贈り物選びですか?」



原田がここに来た理由であろうことをさらっと言うと、二人は表情を変えた



「なっ、なんでお前!」



「知ってたのか、さすが蓮だな」



「お前が言っただろ、新八」


 
「は!?言うわけねぇだろ
言って俺に何の得がある?」




二人の雰囲気が悪くなる



「なんでいちいち喧嘩するんですか
私は巡察の時、よく町の噂を聞いているんです

その中で入った情報ですよ
原田さんが、この先の団子屋で働いているおまさって子をやたら口説いてるって」



ついでに、新撰組についても、最近は悪い噂はあまり聞かなくなった



華蓮の狙い通り、事は進みつつある




「げえっ
お前さ、近頃やたら土方さんの影響受けてるように見えるぜ」



原田は、なぁ?と永倉を見る



「…………沖田さんにも似たようなことを言われました」



自分ではわからないのだが



「はっはっは、そりゃあいい!!
総司が言うなら間違いねぇだろ

ま、夫婦は似るって言うからよ!」



永倉は笑い飛ばしているが、華蓮はそれどころじゃない



「夫婦じゃありません……」



恥ずかしくて俯いて言った華蓮の言葉は二人に届くわけがなかった





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