海風の如く
永倉と一緒に店の外で原田を待つ
「蓮は………その、土方さんから鏡とか、櫛とか巾着とかもらったりしねぇのか?」
唐突な質問に華蓮は驚いた
「えっ?
な、ないですけど………
土方さんお忙しい人ですから」
──着物ならあるけど、あれは借り物だったわけだし……
「欲しい、とか思ったりは?」
「………い、頂けるのなら嬉しい、です
でも、そんな、別に……」
本人がいるわけではないのに、何をしどろもどろしてるのか
自分でもおかしいと思う
「そうか」
永倉はただ、納得したかのように頷いた
───?
何か違和感を覚えつつも、次は華蓮が質問してみる
「永倉さんは、いないんですか?
その……親しくしてる女の人、とか」
遠慮がちに聞いたのに、永倉はガハハと笑った
「俺はそんな余裕ねぇよ
今は自分のことと、お前みたいな可愛い年下の奴らのことで手ぇいっぱいだ」
ガシガシと華蓮の頭を撫でる
「そうですか……」
永倉は酔っ払うと少し面倒くさいし、普段は暑苦しいが、実はしっかり考えていて、本当に新撰組のお兄さん的存在だ
そのたくましい後ろ姿を見ていると、原田が購入した巾着を懐に入れながら出てきた
「待たせたな!
蓮、ありがとな、おかげでいいものが買えた」
「いえいえ、原田さんが決めたんですよ、私は何もしてません」
「女目線の意見があるだけで、ちげーんだよ」
原田も永倉も、ニカッと笑う
そして、屯所へ帰ろうとした、その時
──ザワザワ
「やめてや、離してっ!!」
ただならぬ雰囲気の会話が聞こえてきた