海風の如く
「あの、秘密にしておいてもらえますか?」
これは他の人にバレてはいけない
新撰組の信用にも関わる問題だ
「ええよ、最初っからバラすつもりで言ったわけやないから
あんたが心配だっただけ」
「……え?」
「だって、女なのに刀持って、自分より体の大きい相手と戦うなんて、そら心配になるわ
それを知らずに新撰組の男共が過ごしているんかと思ったら、腹が立ってん」
「おまささん……」
警戒して、肩に力が入っていた華蓮をおまさはそっと抱き締める
「事情はわからんけど、なんかあったらすぐ頼ってな?」
あえて事情を聞かないことも、優しい言葉をかけてくれることも嬉しかった
「…ありがとうございます……!」
「絶対、死んだらあかんよ」
「はい、大丈夫です」
再び顔を合わせた時、お互いに笑顔だった
「さ、お礼にお団子食べてってや」
「いいんですか?」
「もちろん、助けてもろたし
ところで、名前は?」
おまさはお店の奥に入り、支度をし始める
「湊上蓮です」
「そっちやなくて、ほんとの名前」
「……湊華蓮です」
久しぶりに自分の本名を名乗った気がした
「華蓮ちゃんね、うちはまさ
気兼ねなく呼んでもらってかまへんよ」
奥から聞こえる声に胸も弾む
「…わかった、おまさちゃん」
しばらくして、おいしそうなみたらし団子が出てきた
「すごくおいしそう!」
「おまさの団子は最高だぜっ!」
頬張ろうとする原田におまさが釘を刺した
「佐之助はんと永倉はんは一本ずつや
今日は華蓮ちゃんのためにたくさん作ったんやから」
「えっ、冷たいなぁ
俺らだって体張ってんのに」
「男は当たり前や!」
そんな夫婦喧嘩みたいな会話を聞いて、華蓮と永倉は大爆笑
もちろん、華蓮一人では食べきれないので三人で綺麗に平らげた
「ありがとう、おまさちゃん
とってもおいしかったよ」
「うちの方こそ、助けてくれておおきに
また遊びに来てや、今度はゆっくり話したいし」
「うん、またね」
そして、やっと帰路につく