海風の如く
たかが贈り物を買いに行くのにこんなに時間がかかってしまったのだ
怒られるに決まってる
「ったく、何やってたんだよ
待ちくたびれた、早く来い」
──え?
「ふぅ、土方さんがいつも通りすぎて、本気で怒られるのかと思ったぜ」
永倉は不適に笑う
「お前らの演技じゃ、足りねぇからな」
──どういうこと?ついていけない
「おいおい、蓮が固まってるぞ」
原田が華蓮の目の前で手を振るが、考え過ぎていて気にならない
「とりあえず、来いよ」
土方に呼ばれ、華蓮は何がなんだかわからないながらも、後をついて行くことにした
──スッ
土方が広間までとはいかないが、大きめの部屋の襖を開けた
──幹部で会議かな?
この部屋を使うときはだいたいそうだ
「失礼し……!?」
ならば、と気持ちを切り替えたのに、それが一気に無意味になる
目の前にはご馳走と、待ち構えたかのような幹部の顔
「ど、どうしたんですか!?
会議じゃないんですか……?」
「ぷっ、はははっ
そんな辛気臭いことするわけないじゃないですか!!」
会議を辛気臭い呼ばわりできるのは沖田くらいだ
呆れて華蓮もため息をつく
「じゃあ、どうしたんですか、これ?」
それでもわからない華蓮に対して、説明を促すかのように全員が土方を見る
「……今日、生まれた日、なんだろ?」
「えっ?、どうして……」
華蓮が三月十日生まれだということを伝えた覚えはないし、しかもこの時代はまだ日時がハッキリしにくいからわからないはずだ
華蓮は幕末へ飛ばされた日から、毎日欠かさず日付を確認しているから大丈夫なのだが……
「……お前は何か大事な日は空を見上げる時間が長いんだよ
芹沢の命日とか、何か事件が起こる日は特にな
んで、今日はお父さん、お母さんと寝言で言っていた
お前がここに来たのは季節的にもう少し後
だとすると残るは、前に言ってた誕生日ってやつだろ
去年はできなくて、悪かったな」
前に、この時代の人は年が明けると同時に年を取ると聞いたので、誕生日の話はした覚えがある
「……うそ…………………」
しかし、それだけでここまで的中させてくるとは驚きだ
彼らは華蓮の誕生日パーティーをしようとしているのだから
「でも、この時代だと歳を取るのは…」
「皆一斉だが、お前の時代はそうじゃねぇんだろ?」
土方が遮るように付け加える