海風の如く
華蓮が驚きの声を上げたのが不満だったのか、沖田は膨れっ面になる
「そんなに驚かなくても、僕だって何かしたかったんですもん」
「えっと……す、すみません
そんなつもりじゃなかったんですけど」
「なーんてね、味は保証しませんよ」
──出た!!!
「うぅ……」
結局からかわれていることに、華蓮は未だ慣れていない
いい加減学びたいものなのだが
「さあ、みんな揃ったことだし、頂くとしよう」
近藤がそう言うと、皆はお酒の入った器を手に取り、一気に飲む
「あれ、土方さんは飲まないんですか?」
土方はお酒に弱い
想いを伝え合う前にも、酔って華蓮にキスをしてしまったことがある
それ以来、かなり抑えているように見えた
「まあな、このあと一つだけ用事がある
それはしっかりやりてぇんだ」
──仕事かな?
どこまでも真面目なのだ
このあと仕事があるとしてもおかしくはない
「私もお手伝いしますよ、小姓ですから」
「ん?、あ、あぁ」
その後も華蓮の誕生日祝いという名の宴会は続いた
「斎藤さん、とてもおいしかったですよ」
永倉と原田、藤堂は酔いつぶれて寝てしまい、近藤は井上と話をするらしく出て行った
土方も自室に戻り、今は華蓮と斎藤と沖田だけだ
「そうか、それはよかった
ところで、片付けはいいから、部屋に戻れ」
珍しく、沖田も手伝っている
「そうそう、蓮さんのお祝いなんですから、主役が片付けなんてしてどうするんですか」
「でも……お二人だけじゃ」
大の男が飲みまくったのだ、あちらこちらに器や酒を入れていた酌が転がっている
「大丈夫ですよ、ここに寝てる三人を叩き起こしますから」
沖田が黒い顔で笑う時は従った方がいい、と本能が叫ぶ
「わ、わかりました
今日はありがとうございました
おやすみなさい」
「ああ」
「おやすみ、蓮さん」
華蓮は後ろ髪引かれる思いで部屋を出た
「ああでもしないと、僕らが土方さんに怒られちゃうよね、一君?」
「………そうだな」
この後、沖田がどのようにして三人を起こしたのか、華蓮は知らない